(17)減価償却

簿記3級講座

減価償却

決算期になり財務諸表を作成するためには帳簿を修正しなければなりません。この手続きを決算整理と呼びます。
今回は決算整理の一つ、減価償却を学びましょう。

建物や車など有形固定資産と呼ばれるものは年月の経過や使用によってその価値が徐々に減少していく、と考えられます。
使用することにより物理的に壊れてしまったり、時代遅れになって相対的に価値が減少するわけです。

形あるものいずれは朽ちてしまうってことだね。

まぁそういうことですね。そういう意味から有形固定資産は少しずつその価値を失っていくって考えるのが自然です。

うん、そんな気はするね。

ちょっと細かい話をすると、減価償却の目的で一番大事なのは一定期間の損益計算を正確にすることです。つまり正しい利益を計算したいってことです。
日本の会計の考え方には「一期間の収益と費用を対応させて正確な利益を把握すべき」ってのが根本にあります。

例えば、ある製品を加工する機械を50万円で購入したとします。
この機械は5年間使用可能で、この機械を通して生産される製品を販売して毎年100万円の売上があがっているとします。
この場合一年間の収益と費用を考えると次の2通りが考えられます。

①1年目に50万円全額を費用計上する。

②50万円を5年間で10万円ずつ均等に費用計上する。

【一年目に機械の取得原価50万円全てを費用計上する場合】
1年目:収益100万円-費用(機械の価値減少)50万円=利益50万円
2年目:収益100万円-費用(機械の価値減少)0万円=利益100万円
3年目:同上
4年目:同上
5年目:同上

【5年間で機械の取得原価50万円を均等に費用計上する場合】
1年目:収益100万円-費用(機械の価値減少)10万円=利益90万円
2年目:同上
3年目:同上
4年目:同上
5年目:同上

この場合、後者の方が収益と費用が対応していると考えられます。
なぜなら、この機械は1年目だけ製品を生産しているわけではなく、5年間ほぼ等しく収益に貢献していると考えられるからです。
だから取得原価50万円を1年目に一度に費用計上するより、5年間に分割して費用計上した方が適正だと見なせます。

そんな理由から毎年固定資産の価値を減少させる処理を行うことになります。これが減価償却です。

減価償却の方法

では実際にどうやって減価償却費を計算するのかを学びましょう。

減価償却

減価償却の方法は4種類ありますが、簿記3級で出題されるのは一番単純な定額法だけです。
ですからここでは定額法の説明のみを行います。

定額法の計算式は以下の通りです。

(取得原価-残存価額)÷耐用年数=1年間の減価償却費

取得原価は固定資産を手に入れるために要したお金です。
購入手数料などの付随費用も含まれることに注意しましょう。

残存価額とは最後まで減価償却した後に残っているであろう価値を意味します。
通常は取得原価の10%です。
10%引くもんだと覚えておいてOKです。

ただ、この辺りも最近の会計基準の変更などで変わりつつあります。
2007(平成19)年4月1日以降取得の固定資産に関しては残存価額が廃止され、
残存簿価1円(帳簿上に存在させるために1円にしているけれど、実質価値がない)まで償却できるようになりました。
つまり、減価償却費は

取得原価÷耐用年数=1年間の減価償却費

という式になります。

耐用年数とは、その固定資産が何年間使用できるかを示しています。
ただ、その年数を超えると使用することができなくなるわけではありません。
あくまで減価償却を行う上で用いる数字ってだけです。
簿記検定上、必ず問題で与えられる数字なので覚える必要はありません。

減価償却 またまた蛇足的な話になってしまいますが、
固定資産にはその種類や使用目的に応じて「法定耐用年数」というのが法人税法で定められています。
木造住宅は22年、鉄筋コンクリート造は47年、自動車は3~5年、競走馬は4年
(動物も固定資産とみなされるので法定耐用年数が定められています)みたいな感じです。
日本ではこの法定耐用年数に従わなければなりませんが、
例えばフランスでは企業ごとにこの耐用年数を自社で決定することができます。
適正な耐用年数を考えるのは面倒ですが、この方が企業ごとに適正な減価償却ができそうですね。
ちなみに2014年ごろからIFRS(国際財務報告基準)が導入されると、
日本でも大きな企業では自社で耐用年数を決定しなければならなくなるかもしれません。

減価償却の仕訳 †

では実際にどういう仕訳をするのかを学びましょう。
減価償却の仕訳は「直接法」と「間接法」の2種類あります。
間接法を採用するのが一般的ですが、両方できるようにしておきましょう。

【直接法】
■例:04年4月1日(期首)、機械Aを24,000円で取得した。耐用年数は6年、定額法により減価償却を行っている。
費用の減少→ (減価償却費) 3,600 / (機械A) 3,600 ←資産の減少

【間接法】
■例:04年4月1日(期首)、機械Aを24,000円で取得した。耐用年数は6年、定額法により減価償却を行っている。
費用の減少→ (減価償却費) 3,600 / (減価償却累計額) 3,600 ←評価勘定

まず減価償却費の計算式ですが、
{24,000-(24,000×10%)}÷6=3,600
です。
残存価額はほとんどの場合10%なので、簿記検定で問題を解く場合は
24,000×0.9÷6=
という風に0.9を乗じると素早く計算できます。

しかし、上記した通り2007(平成19)年4月1日以降取得した有形固定資産に関しては
残存価額がなくなりましたので、問題文を読んで判断しましょう。

さて、直接法と間接法の違いですが、
貸方(右側)の勘定を「機械A」にするか「減価償却累計額」を使用するかがポイントです。
結論から言うと、間接法、つまり減価償却累計額を使うのが普通です。

直接法は「機械A」という資産勘定から直接価値の減少を減算してしまっているので、
帳簿上示されている機械Aの値が償却後の数字になってしまいます。

減価償却

後々分かってくると思いますが、
減価償却を計算する上で取得原価がすぐに分かる方が計算はスムーズに行えます。
直接法だと取得原価はパッと見では分からなくなってしまいます。
それに元々いくらで買ったものなのか、すぐに分かった方が何かと便利です。

一方、間接法では機械Aという勘定の値は取得原価のままです。

減価償却

代わりに価値の減少分を減価償却累計額という勘定に蓄積し、
どれだけ価値が減少しているのかを知ることができます。

期中に取得した固定資産の減価償却 †

先ほどの例では期首(会計期間の初日)に有形固定資産を取得した場合について考えました。
しかし現実にはそんなことはまれで、期中(期首、期末以外)に取得することの方が多いでしょう。

では期中に取得した固定資産の減価償却はどうなるのでしょう?
計算方法は同じです。

(取得原価-残存価額)÷耐用年数=1年間の減価償却費

でもこれは一年間の減価償却費なので、使った月数分に修正しましょう。
減価償却は月割計算をします。
月割計算とは月単位での計算です。そのまんまですね(^^;

例を挙げましょう。

【直接法】
■例:04年7月10日、機械Aを24,000円で取得した。耐用年数は6年、定額法により減価償却を行っている。
なお当社は4月1日~3月31日を会計期間としている。
(減価償却費) 2,700 / (機械A) 2,700

【間接法】
■例:04年10月30日、機械Aを24,000円で取得した。耐用年数は6年、定額法により減価償却を行っている。
なお当社は4月1日~3月31日を会計期間としている。
(減価償却費) 1,800 / (減価償却累計額) 1,800

月割計算なので7月10日に取得した場合、7月~3月の9ヶ月で

3,600(一年間の減価償却費)×9ヶ月÷12ヶ月=2,700

10月30日に取得した場合、仮にその月に1日、2日しか使っていなくても1ヶ月として見なすので
10月~3月の6ヶ月間で、計算式は

3,600(一年間の減価償却費)×6ヶ月÷12ヶ月=1,800

となります。

有形固定資産の売却 †

決算整理ではありませんが、有形固定資産を売却する処理も覚えておきましょう。
そもそも固定資産を売却すること自体が例外的なのですが、
簿記検定に良く出題されるので、知っておかなければなりません。

【直接法】
■例:帳簿価額450,000円の建物を500,000円で売却し、代金は月末に受け取ることにした。
減価償却は直説法を採用している。

資産の増加→(未収金) 500,000 / (建物)      450,000 ←資産の減少
/ (固定資産売却益) 50,000 ←収益の増加

【間接法】
■例:帳簿価額400,000円、減価償却累計額350,000円の建物を20,000円で売却し、現金を受け取った。
減価償却は間接法を採用している。

評価勘定→ (減価償却累計額) 350,000 / (建物) 400,000 ←資産の減少
資産の増加→(現金)       20,000 /
費用の増加→(固定資産売却損)  30,000 /

固定資産を売却した際に発生する費用、収益は
固定資産売却損、固定資産売却益という勘定を用います。
(ただし、これは絶対ではなく建物売却損、建物売却益を使ったりもします。これじゃなきゃ駄目ってわけではないんですね。
簿記検定では問題の指示に従ってください。この勘定を使えって言われるので)
帳簿価額というのはそのまんま帳簿上記載されている数字という意味です。
固定資産の価値の減少は期末に行われるので、
ここで言う帳簿価額は期首の時点での建物の価値を示しています。
直説法の場合、この数字は取得原価ではなく目減りした数字であり、
間接法の場合、この数字は取得原価そのものです(例外はありますが)。

最後にもう一つだけ例題を。
簿記3級では必要ないかもしれませんが、
ここまでのことが理解できていればいくらでも応用は効くはずです。

■例:期首時点で帳簿価額400,000円、減価償却累計額350,000円の建物を
9月20日に10,000円で売却し、現金を受け取った。
この建物の耐用年数は30年で定額法による減価償却を行っている。
なお当社は4月1日~3月31日を会計期間としている。
(減価償却累計額) 350,000 / (建物) 400,000
(減価償却費)    6,000 /
(現金)      10,000 /
(建物売却損)   34,000 /

借方の減価償却累計額と貸方の建物の数字は期首のものそのままです。
2行目、減価償却費を使っています。
本来、減価償却を行うのは期末なのですが、今回期中で売却してしまっているので
例外的に売却時までに使用した分の償却を考えてやります。

400,000(取得原価)×0.9÷30=12,000(一年間の減価償却費)

4月~9月の間使用したので6ヶ月です。

12,000×6ヶ月÷12ヶ月=6,000

これで半年分の減価償却費が計算できました。
売却して得た現金を加えて、借方・貸方の差額が売却損益になります。
今回は売却損になっています。

以上で減価償却は終了です。
今までの学習ではこれといった計算はありませんでしたが、
減価償却を行う場合は結構計算機を使います。

 

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