現金

今回のお題は現金です。

おお、お金そのものですな。

そうだね。でも会計上、現金はお金そのものだけじゃないところがポイントです。通貨代用証券と呼ばれるものも帳簿上現金として扱われます。

通貨代用証券(つうかだいようしょうけん)?

具体的には次のものが代表的です。
通貨代用証券
① 他人振出小切手(たにんふりだしこぎって)
・・・他の人が発行した小切手。
② 期限到来公社債利札
・・・債券についている利札で支払期限が到来したもの。
③ 配当金領収証
・・・株式を保有することで支払われる領収証です。

検定試験でこういう名前が出現したら「現金」として扱わないといけないので、名前は憶えておいた方がいいですね。

株はなんとなく分かるけど、小切手とか公社債とかってなに?

小切手というのは当座預金という主に決済専用の無利息の銀行預金から現金が支払われる証券です。
簡単に言えば、他の人が振出(ふりだ)した=作成した小切手を銀行にもっていくと現金と交換してくれます。
小切手は本物の現金に比べ携帯しやすかったり、防犯にも役立つ点が優れています。

ふんふん、なるほど。

公社債というのは債券。国債とか社債のことですね。債券は国や会社に貸しているお金であって、その利息を一定期間ごとにもらえます。

なるほど。配当金にせよ債券の利札にせよ、現金に交換できるものを現金勘定と扱えばいいんだね。

そうそう。じゃあ具体的に仕訳をみていきましょう。
例:商品を50,000円売り上げて、現金を受取った。
仕訳
資産の増加→(現金)50,000 / (売上)50,000←収益の増加
例:商品を50,000円売り上げて、他人振出の小切手を受取った。
仕訳
資産の増加→(現金)50,000 / (売上)50,000←収益の増加
例:所有する社債につき、利札1,000円の利払い日が到来した。
仕訳
資産の増加→(現金)1,000 / (有価証券利息)1,000←収益の増加
例:所有する株式につき、10,000円の配当金領収証が送られてきた。
仕訳
資産の増加→(現金)10,000 / (受取配当金)10,000←収益の増加

とりあえず、仕訳はこんな感じ。

小切手は本当に現金と同じ仕訳なんだね。

そうですね。受取った小切手は現金と見なします。債券の利札と配当金領収証も現金として計上されていますね。利札は有価証券利息、配当金は受取配当金という収益の勘定が用いられます。これは決まりごとだから覚えてください。
現金過不足

さて、現金の取引をしていると帳簿の現金と現実の現金に差が生じることがあります。

へ? なんで?

理由は色々だろうけど。記入漏れとか、金額を間違えて書いてしまったとか、紛失してしまったとか。

ああ~、ありそうだね~。

で、差があることが発覚したら帳簿を実際の値に修正するために仕訳をしたいのですが、相手勘定を何にすればいいか分かりません。
例:現金勘定の帳簿残高は50,000円だが、現金の実際有高は49,000円だった。原因は不明だった。
仕訳
何にすればいい?→(?)1,000 / (現金)1,000←資産の減少

とりあえず、例では実際の現金が1,000円足りていないので帳簿の金額を減らします。ですが、どうして帳簿より実際の現金が少ないのか、その理由が分からないので相手勘定を何にしたらいいのかが分かりません。

そうだね。どうしたものか。

こんな時は、現金過不足という勘定を一時的に使うことになっています。先ほどの例で見ると仕訳は次のようになります。
仕訳
仮の勘定→(現金過不足)1,000 / (現金)1,000←資産の減少

ほう、現金過不足とな。

現金過不足が仕訳に登場した後には2通りの仕訳が考えられます。
原因が判明する場合(ケース①)と原因が最後まで分からない場合(ケース②)です。
ケース①:先の現金過不足の原因は販売費1,000円の記入漏れだった。
仕訳
費用の増加→(販売費)1,000 / (現金過不足)1,000←仮の勘定
ケース②:先の現金過不足の原因は最終的に不明だった。
仕訳
費用の増加→(雑損)1,000 / (現金過不足)1,000←仮の勘定

決算日になっても原因が分からない場合は雑損(または雑損失)という費用勘定を用います。また、これとは逆に帳簿より実際の現金が多く、原因が分からなければ雑益(または雑収入)という収益勘定を貸方に書くことになります。

①と②を見てもらえれば分かると思いますが、現金過不足は必ず逆仕訳によって消滅します。つまり決算書に現金過不足という勘定は載らないってことですね。

ふむふむ、現金過不足は一時的に使ってるだけってことだね。

ちなみに①と②が混じったケースも考えられるからね。
ケース③:先の現金過不足の原因として販売費500円の記入漏れがあることが分かった。残りは不明だった。
仕訳
費用の増加→(販売費)500 / (現金過不足)1,000←仮の勘定
費用の増加→(雑損) 500

なるほどなるほど。

では最後に「帳簿の現金<実際の現金」の場合の仕訳を見てみましょう。
例:現金勘定の帳簿残高は35,000円だが、現金の実際有高は40,000円だった。原因は不明だった。
仕訳
資産の増加→(現金)5,000 / (現金過不足)5,000←仮の勘定
例:上記の現金過不足の原因として売掛金の回収4,000円と一般管理費2,000円の支払いが未記帳だった。
仕訳
仮の勘定→ (現金過不足)5,000 / (売掛金)4,000←資産の減少
費用の増加→(一般管理費)2,000 / (雑益)3,000←収益の増加

!?

ちょっと複雑にしてみましたが、雑益、雑損の値は差額になります。