(4)三分法の方法

簿記3級講座

前回、商品売買の仕訳には2通りあることを説明しました。分記法三分法でしたね。簿記3級を受験する上で分記法の仕訳方法も一応覚えておいてください。出題される可能性はあります。ただし問題に指示がない限り三分法を使うのが普通です。

それでは三分法の説明です。そもそもなぜ三分法なんて名前なのか? それは使う勘定科目が3つだからです。「売上仕入」「繰越商品」の3つです。

前回説明したとおり、商品を仕入れたら仕入勘定、商品を売上げたら売上勘定に記帳していきます。(勘定科目のことを~~勘定と呼ぶのが一般的です)
では繰越商品とはなんでしょう?これは名前のとおり手元に持っている商品を意味します。

商品勘定だったら分記法に出てきたんじゃ・・・?
結局同じなの・・・?

そう思われるかもしれませんが、「繰越商品」は基本的に期首と期末のみに登場する勘定で、分記法のように期中の売買取引時に現れることはありません。期末に残っている商品を認識するための勘定だと思ってください。

それでは繰越商品の仕訳はどんな感じか例を見てみましょう。

例: 期末に残っていた商品在庫は5,000円分だった。

(繰越商品)5,000
【資産増加】
(仕入)5,000
【費用減少】

このようになります。

ちょっと分からないね・・・。

仕入勘定を図で見たら感覚的に理解しやすいと思います。

どうでしょう?これは前回説明した売上原価の計算式と同じことです。
当期仕入―期末商品=売上原価

・・・まだ上の仕訳とこの図の関連が掴みにくいかもしれませんね。もう少し時系列的に見てみましょう。

期中に商品を仕入れるたびに仕入勘定の借方(左側)に金額が積み上がっていきます。

■仕入勘定

(仕入)5,000
【費用増加】
(現金)5,000
【資産減少】

ここで注意してもらいたいのは、この仕入の借方(左側)は現在保有している商品在庫ではない、ということです。あくまで仕入れた総額にすぎません。

この仕入れた商品は期中に他の会社や消費者に販売されているので、帳簿上は分かりませんが減少しているはずです。この点が分記法との違いですね。(分記法は販売の都度商品が減る仕訳をきります)

そして期末に在庫(棚卸高(たなおろしだか)とも呼びます)の確認をします。これが最初に見た繰越商品の仕訳に相当します。

(繰越商品)5,000
【資産増加】
(仕入)5,000
【費用減少】

ちゃんと仕入勘定が貸方(右側)に書かれてますよね。そうしたら後はもう分かりますね。

仕入勘定の残高が売上原価(当期に売れた商品の原価)に相当する、というわけです。

細かいところを勉強していると時々忘れてしまいますが、簿記の最終目標は貸借対照表と損益計算書を作成することです。企業の財政状態および経営成績を示さなければならないんでしたね。

売上原価を求めるのは経営成績を理解するため。期末商品を調べるのは財政状態を知るためです。なんでこんなことやってんだろ?と思ったら、このことを思い出してください。必ず意味はあります。

ふーむ。

さて今までの説明では仕入勘定の借方(左側)に当期仕入分しかない状況を考えましたが、もし期首に商品在庫があった場合(この方が普通だと思います)はどんな仕訳をすることになるでしょう?
結論から言うと期末の仕訳の逆を行います。

(仕入)5,000
【費用増加】
(繰越商品)5,000
【資産減少】

 

これは前期末に在庫として残っていた繰越商品を当期首に仕入に振替(ふりかえ)ているんです。(振替とは実際にモノの移動、例えば物品の売買などをしていない状態で勘定の名前だけを変えていると考えてください。お金の移動が行われたわけではありません)

仕訳だけ見るとなんのこっちゃわからないね。

仕入勘定、繰越商品勘定の期首の状態を見てみましょう。

仕入勘定は空っぽです。繰越商品の借方には前期末の商品在庫が計上されています。仕入勘定が空なのは分かりますよね?仕入は費用の勘定科目です。つまり経営成績に属する勘定です。

ところで経営成績っていつの成績ですか? 今日? ここ一週間?

一会計期間の成績ですよね。とりあえず一会計期間を一年間(4/1~3/31)と考えた場合、3/31までの一年間の成績を発表します。
そして次の一年間の最初の日、4/1の段階で成績はまっさらな状態になります。始めから「今年は利益が+1,000万円でスタートです!」とかありませんよね? ゲームじゃないんだから。
収支±0の状態からスタートして期末にいくら儲かったのかを計算するのです。だから収益、費用に属する勘定は期首には0になっているはずです。

では繰越商品はどうでしょう。期首に前期末分が計上されています。繰越商品は資産です。財政状態を知るための一要素ですね。
なんらかの資産価値が認められるもので、成績のように概念的なものではありません。だから一会計期間が終わったからといって、翌日にいきなりなくなるものではありません。

確かに成績は±0から始まって、資産とかは前期のものが何かしら繰り越してくるね。

さて、三分法では仕入勘定でもって売上原価を求めているので、将来売上原価になる繰越商品を一度仕入勘定に戻してやらないといけません。だから勘定連絡図(下図のような勘定の流れを意味します)で示すとこんな感じになります。(期首商品を前期繰越としていますが、今はそれほどこだわらないで下さい。意味は同じです)

(仕入)5,000
【費用増加】
(繰越商品)5,000
【資産減少】

今までの分を含めて一年間の仕入勘定を考えると以下のようになります。

さて、これで商品売買の基本的な仕訳は終わりです。最後に一年間の流れをイメージしてみましょう。

①商品仕入れの仕訳

(仕入)5,000
【費用増加】
(現金)5,000
【資産減少】

②商品売上の仕訳

(現金)8,000
【資産増加】
(売上)8,000
【収益増加】

③期首商品の振り替えの仕訳費用が増→ (仕入) 1,000 / (繰越商品) 1,000 ←資産が減

④期末商品の振り替えの仕訳資産が増→ (繰越商品) 2,000 / (仕入) 2,000 ←費用が減

期中に①と②を繰り返し、期末に期首商品と期末商品の仕訳をします。この③、④の期末に行う期首商品・期末商品の振替作業を決算整理(けっさんせいり)と呼びます。決算整理は一年間蓄積してきた仕訳を決算書作成のために、適正に修正してやる作業です。これに関しては別途章を設けて説明します。

商品売買はこれで完了かな。なかなかボリュームあるね。

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