(3)商品売買の仕訳

簿記3級講座

商品売買について

簿記3級では『モノを仕入れて、モノを販売する』商業についての簿記を前提としています。商品の流れは次のようになります。

商業の流れ

仕入先 -(商品仕入)→ 当社 -(販売)→ 得意先

「日商簿記3級では」と表現したのは、2級、1級では商業簿記のほかに
工業簿記が出題範囲に含まれるからです。
工業簿記は製造業での原価計算(製品1個をつくるのにいくらお金を費やしたかを計算する)に関する簿記を示します。この場合の製品の流れは以下のようになります。

製造業の流れ

仕入先 -(原料仕入)→ 当社(自社製造)-(販売)→ 得意先

違いは自分の所で作るってだけ?

商品売買とほとんど変わらないって思われるかもしれないけれど、他所で完成されたものを仕入れてくるよりも、自社でモノを作る方が計算は面倒になっちゃいます。だからわざわざ別の名称で工業簿記なんて試験を作っているんですね。こちらは追々学んでいってください。

それでは『モノを仕入れて、モノを販売する』取引についての仕訳を学んでいきましょう。

まず、結論から言うと2種類の仕訳が知られています。『分記法』と『三分法』です。
どちらを使っても構いませんが一般的なのは『三分法』です。

・・・え!?仕訳の方法が2つあるってどういう意味?

1つの取引にいろんな処理の仕方があるってこと?

その通りです。

いやいや、その通りって。いいの?そんなの?

会計の処理方法には、いくつかの方法が認められている場合があります。少し蛇足的な話になるけれど、今後のためにぜひ知っておいてください。会計処理は複数?のページで説明しています。

それでは2つの仕訳を学んでいきましょう!
仕訳の横には分かりやすいように資産・負債・収益・費用のいずれに分類される勘定科目なのかを示しています。
本来は書かないものですから、試験とかに書かないでくださいね。

商品売買の仕訳

分記法

■仕入時(商品を買った=仕入れた)
例:5,000円分商品を仕入れ、代金は現金で支払った。

(商品)5,000
【資産増加】
(現金)5,000
【資産減少】

■売上時(商品を売った)
例:4,000円分の商品を7,000円で販売し、現金を受取った。

(現金)7,000
【資産増加】
(商品)4,000
【資産減少】
(商品販売益)3,000
【収益増加】

三分法

■仕入時(商品を買った=仕入れた)
例:5,000円分商品を仕入れ、代金は現金で支払った。

(仕入)5,000
【費用増加】
(現金)5,000
【資産減少】

■売上時(商品を売った)
例:4,000円分の商品を7,000円で販売し、現金を受取った

(現金)7,000
【資産増加】
(売上)7,000
【収益増加】

解説

商品売買では次の勘定科目が登場します。

勘定科目

資産:商品、現金
収益:売上、商品販売益
費用:仕入

勘定科目の位置づけについては仕訳の解説ページをご参照ください。

 

商品売買については結論から言うと三分法が主流です。簿記検定上、特に指示がなければ三分法を使用します。一般の企業でもこちらを採用している会社の方が多いでしょう。

ただ、簿記に慣れていない人には分記法の方が理解しやすいと思います。

分記法では商品を仕入れたら、資産として商品が入ってきます。

【分記法の仕訳】

(商品)5,000
【資産増加】
(現金)5,000
【資産減少】

そして商品を売ったら商品が出て行く。

【分記法の仕訳】

(現金)7,000
【資産増加】
(商品)4,000
【資産減少】
(商品販売益)3,000
【収益増加】

容易に読み取れますね。仕訳のたびにどれだけ利益(商品販売益)が出たかが分かります。

一方、三分法では商品を仕入れたら次のようになります。

【三分法の仕訳】

(仕入)5,000
【費用増加】
(現金)5,000
【資産減少】

仕入(しいれ)という費用の勘定科目を用い、商品を売ったら次のように売上(うりあげ)という収益の勘定科目を用います。

【三分法の仕訳】

(現金)7,000
【資産増加】
(売上)7,000
【収益増加】

ここでは売り上げがあるたびに、商品がいくら減ったということは認識していません。かつ利益がいくら出たのかも読み取ることはできません。

しかし期末(一会計期間の最終日)にはいくら儲けたのかが分からないといけません。そのためには商品がどれだけ売れたのかを判明させないといけない。どうしたらいいでしょう?

・・・・・・?

答えは「差額をとる」です。

三分法の場合、商品がいくつ売れたかは直接には把握していませんが、当期に仕入れた商品の価値と期末に手元に残っている商品の価値については分かっています。

期首在庫+当期の仕入-期末在庫=当期に売れた商品(売上原価)

これで売れた商品の仕入れ値(これを売上原価と呼びます)がわかります。そして売上高-売上原価=利益となります。

例えばリンゴを扱っているとしましょう。

①期首(4月1日)にリンゴを200円分もっていました。

②4月1日~3月31日に10,000円分のリンゴを購入しました。

③期末(3月31日)に保有しているリンゴは500円分です。

この場合、売上原価=①+②-③=9,700円、となります。

あー、なるほど。

ところで、三分法って面倒だと思いませんか?

わざわざ「仕入」「売上」なんて勘定科目を使っているから、期末に改めて売上原価や利益を求めないといけないんですよね?

その点、分記法だったら仕訳のたびに利益が算出されるし、商品在庫もばっちり分かっています。にも関わらず、面倒な三分法の方がよく利用されているってどういうことでしょう?

うーん?

理由は、分記法の方が面倒だからです!

!?

なんだか矛盾したことを言っている感じがしますが、間違いではありません。

分記法は仕訳のたびに逐一利益が算出され一見詳しい情報が得られて便利な気もしますが、これがクセ者です。

ぶっちゃけ取引のたびに利益を算出するのは非常に煩雑です。取引なんて一年間に何千件、大企業なら何万件とあることでしょう。
そのたびに「この取引で2,000円の利益」「この取引で500円の利益」「この・・・」なんてことをやっていたら気が狂ってしまうかもしれません。(コンピューターの発達した現代ではそれも可能となりましたが)

実務上面倒なことは、なるべくやりたくありません。

 

三分法では取引のたびに利益を算出することはありません。期末に一度計算してやればいいだけです。こちらの方が断然楽じゃないですか?
それに計算の正確さだって大差ありません。そんなわけで広く採用されているのは三分法です。

なるほどな~。

次は三分法のもう少し詳しい説明です。

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