仕訳(しわけ)を覚えよう

さて、複式簿記の良さが分かったところで複式簿記について少しずつ知っていきましょう!

あい~。

複式簿記の基本は仕訳です。何かお金の価値に変化があったら必ず仕訳をきります。まず仕訳。とにかく仕訳だから。ここはしっかりおさえておいてね。

ちなみに今まで『現金』とか『~費』とかのことを『項目』って表現していましたが、簿記の世界では『勘定科目(かんじょうかもく)』と呼ぶので覚えておいてください。

か、かんじょうかもく?

覚えにくい名前だけどね。学校の国語とか数学のことを『科目』っていうでしょ。あんなもんだと思ってくれたらいいよ。ただそう呼んでいるだけだから、難しく考えないで丸暗記しちゃってください。

それから、そもそもどうして仕訳帳に仕訳を書くのか、だけど。

あーそうだね、なんで?

仕訳帳の役割は「全ての取引の記録」です。発生した順番に全て書き連ねていくんです。そしてその歴史的記録を元帳という分析ツールに転記していくんだね。

ほ、ほう?

まぁ、その辺も勉強を進めていくと意味が分かってくると思います。
仕訳(しわけ)の仕組みを覚えよう

仕訳とは取引(金銭価値のある物品や権利などの増減)を意味します。仕訳は左、右に勘定科目と金額を記入します。

このように左と右に勘定科目と金額を書くことで取引を表現しています。上記の仕訳は『(車両) 50,000 (現金) 50,000』と書いたりもします。そして左右の金額は必ず一致します。

この仕訳は「車両を50,000円で買って、現金を50,000円支払った」ことを意味します。さらに簿記の世界では左側を借方(かりかた)、右側を貸方(かしかた)と呼びます。
仕訳を構成している要素はたったの3つ

取引(経済的価値の変動)は3つの要素だけで表現できてしまいます。
仕訳の3要素
1つ目は「ものの名前(勘定科目)」
車や建物など有形物であったり、利益といった概念的なもの、金銭価値で表現できるもの全般が該当します。
2つ目は「金銭の額」
簿記で記される数字はお金の額です。 お金で表現できないものは会計の対象にはなりません。だから努力とか創造力なんかは仕訳できません。
3つ目は「左右の位置」
仕訳は上記「ものの名前」&「金銭の額」を1セットとして左側と右側に記します。
この左右の位置が「ものの名前」&「金銭の額」の増減を意味します。
取引というのは、会計上何かが何円増えた、減ったという無味乾燥な状態で保存されます。
ビジネスには人の情熱とか様々な思惑が交錯しているはずですが、そういった感情の全てが削ぎ落とされて結果だけが記録されます。その増減を表しているのが、仕訳においては左と右の位置なのです。

この仕訳って、左と右でなにか意味あるの?

いいところに気がついたね。もちろん意味があります。例えば現金で考えてみましょうか。

このときは現金が減ったことを意味しています。
(現金200,000円で土地を購入した)

このときは現金が増えたことを意味しています。
(有価証券(株式や債券)を売却して現金30,000円を受け取った)

・・・右にきたら減って、左にきたら増える?

おぉ!するどい!やるねぇ。全くその通りで、現金は左なら増加。右なら減少を意味します。じゃあ、今度は借金に注目してみよう。

えっと、借金は右側にあるから借金が減って、現金は左側にあるので増加かな。

ん?それっておかしくないかい?借金が減って現金が増える。そんなことってあり得るかな?

えっと・・・?

お金を借りることが借金です。お金を借りる⇒手許の現金が増える。逆に借金を返そうとしたら現金が減るのです。
現金が減って⇒借金が減る。それなのに「借金が減って現金が増える」って嬉しすぎることじゃない?
これがまかり通るなら、この逆で「借金が増えて現金が減る」っていうことも起こり得ることになります。(時間経過を伴った事象としては、借金が増えたことでしだいに現金が減っていく、ということは起こり得るわけですが、仕訳はあくまでその一時に起こったお金に関するものの流れを示しています)

あれ?なんでだろ?借金が右にあって減少で、現金が左にあって増加で・・・?

ごめんごめん、ちょっと意地悪だったね。実は借金は右にあるとき増加を意味します。逆に左にあるときは減少。これだとすっきりいくでしょ。
【現金増加】
【借金増加】

あ~、そうだね。借金が増えて、手持ちの現金が増えるね。え、でもなんで?現金と借金では位置が違うと意味が違っちゃうってこと?

そういうことだね。

うえぇ、会社って項目(勘定科目)が多いって言ってたじゃない。ひょっとして、それ全部の左右を覚えなきゃいけないってこと?

いやいや、当然全部なんて無理だよ。覚えなきゃいけないのは全部で5つだけ。大きな5つのカテゴリーの中に全ての勘定科目が分類されているから、個々の項目は属するカテゴリーの左右の法則に従えばいいだけだよ。

暗記物って苦手なんだよね・・・。

大丈夫、大丈夫。図で簡単に覚えられるから。

あと蛇足的な話ですが、簿記の勉強をする際、金額を書くときはカンマ(コンマ)をちゃんとつけましょう。1,000の位ごとに「,」をつける必要があります。簿記検定で「,」を付けないとおそらく点数をもらえないでしょう。

ありゃそうなの?

実務の場でもそうですが、パッと見て何円か判断できないような書き方は好まれません。試験を採点する人に優しい記述をすべきです。素早くかつたくさん処理しなければならない中に、いちいち0の数を数えさせる答案があったら気分悪いですよね。

なるべく処理しやすい気遣いが必要なんだね。
現実での仕訳(おまけ)

取引は「ものの名前」「金額」「左右の位置」を使った仕訳で表現できます。そして簿記検定で要求されるのもこの3点です。

うん。

しかし現実の仕訳処理ではそれ以外の情報も入力されます。

どんな?

例えば社員の旅費。どこに出かけたかの情報が記載されていないとその旅費の金額が適正なものかどうかわかりませんよね。

まぁそうだね。

その仕訳の金額や勘定科目が適切なものかを判断するためにも取引の内容も記載するのが一般的です。摘要(てきよう)欄という箇所に入力します。(経理は回ってきた伝票を見てその正誤を判断しています)

ふーん。

他には消費税の区分や部門、担当などのコードを入力したりします。

消費税が関係するの?

消費税の詳しい話は避けますが、消費税は課税される取引、課税されない取引があったり、税率に違いがあったりで取引ごとにコードを付けておかないと分類集計できないのです。申告するために必要な情報を付しておかないといけないんですね。

そして会社の規模にもよりますが、部門や担当などを分類するためのコードをつけたりもします。

分類?

例えばスーパーだと生鮮食品、お惣菜、乳製品、お菓子、乾物、飲料などに分類した方がどの分野の売上高、利益率が高いのかなどの判断ができます。

学校のテストで例えると、全教科の合計点300点のA君とB君がいるとして、この情報だけではそれぞれ何が得意で何が苦手なのかがわかりません。どこを改善すべきかわからないのです。
しかし、科目別の点数がわかればどこに力を注ぐべきかわかるはずです。A君、B君の科目別点数が次のようならどうでしょう。
A君は国語50点、算数100点、理科80点、社会70点。
B君は国語70点、算数70点、理科90点、社会70点。

A君は国語の勉強をもう少しやったほうが良さそうだね。B君はまんべんなく勉強量を増やした方がいいかな。

こんな具合に分類すると色々な情報を得ることができます。現実の仕訳でも分類のための記号を付すことがあります。簿記検定で出題されることはないですけどね。