(5)複式簿記の長所は複雑な取引を表現できる点

簿記入門講座

複式簿記の長所は複雑な取引を表現できる点

さて、複式簿記の利点を説明する前に単式の話をしましょう。単式簿記はもともと資産や負債(あとで説明します)の種類が少ないことを前提にしています。

種類が少ない・・・?

たとえばお金の払い方。ヒヨコ君は物を買うとき、どうやってお金を払う?

どうやってって・・・。財布からお金をだして、手渡しするけど。

ああ、ごめんごめん。そうじゃなくて、現金かクレジットカードかって意味だったんだ。いつもは現金で支払っている、ってことでいいんだね?

そうそう。

個人が買い物をする場合、多くの人は現金を使います。クレジットカードも普及しているけれど、使えない店もあるしね。つまり支払い手段は現金(資産)の1種類だけということになります。(クレジットカード(負債)を入れても2種類)

だから単式簿記である家計簿には【日付】【買った物の名前】【金額】さえ書いておけば、後から見直してもどういう物を買って現金の残高がいくらかあるのかが分かる。現金で支払ったという前提があるからですね。

へぇ・・・?

でもこれが現金での支払いじゃなかったら?

え?

もし家計簿の支払いの欄にクレジットカードでの支払いが混じっていたら、見分けつくかい?

んん?

家計簿は前回記帳した現金の残高に収入と支出を増減させて現在の金額を計算します。でも、もしもクレジットカードの支払い分がその中に混じっていたら、クレジットカードは後払いだから、家計簿が示す現在の現金残高と実際にもっている現金との間に差が生まれることにならない?

(以下の場合、実際は帳簿よりも2,500円多く持っていることになります)

あ~、それならクレジットカードの分だけ何か印をつけておけばいいんじゃない?

そうだね。家計簿ならそれでいいかもしれない。でも会社でそうするとどうなるかな?

あ、ひょっとして項目が多いから・・・?

そう。会社の代金の支払い方は現金、後払い、前払いなど複数の方法があり、それぞれ頻繁に出現します。単式簿記の様式だと帳簿を見たときに、それぞれどれだけ使ったのかわからなくなってしまいます。

それで取引ごとに項目名を書く?

そう。それが仕訳なんだ。そして項目ごとに集計することで、その残高が簡単にわかるわけ。つまり分類わけすることで管理しやすくなるんです。

例を挙げようか。4月12日にバナナ一房を200円で買ったとしよう。家計簿だったら『4/12 バナナ 200円』で十分わかります。

単式簿記『4/12 バナナ 200円』

だけど会社の帳簿だと次のように書かないといけません。

複式簿記

『4/12 バナナ 200 / 現金 200』
『4/12 バナナ 200 / 買掛金 200』
『4/12 バナナ 200 / 支払手形 200』
『4/12 バナナ 200 / 前払金 200』

一見面倒くさそうだけど、こうしておくことで分類わけが簡単にできるわけです。

なるほど、だから取引ごとに仕訳を行うんだね。これが複式簿記なんだね。

そういうことだね。じゃあ次はその仕訳について学んでいきましょう。

ちなみに単式簿記を複式簿記に書き換えると次のようになります。

単式簿記と複式簿記の共通点・差異『4/12 バナナ 200円』

『4/12 バナナ 200円 / 現金 200』

単式簿記は右側の『現金 200』が省略されているってわけですね。

複式簿記の利点

取引(お金に関わる物品や価値の増減)があると、必ず2つ以上の項目の値が増減します。一つの項目だけが増えたり、減ったりすることはあり得ません。ひとりでに財布の中の現金が増えている、なんてことないですよね?

複式簿記はそれぞれの項目を分類わけするために使われます。今、現金はいくらあるのかな?借金はいくらあるのかな?なんて聞かれてもすぐに答えることができます。

家計簿でも食費、書籍代、ネット代など項目わけをして記載するね。あとで食費にいくらかかったのか知りたければ、食費欄の値を集計すればいいのか。

そういうことですね。項目の数が多い会社規模で同じことをしようとすると単式簿記では無理なので複式簿記を利用するわけですね。

 

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